起業を目指すときに避けること、考えることとは?
【こんな動機で起業は避けたい】
私と同年代の方の多くは、概ね60才で最初の定年退職を迎え、雇用延長や再雇用を選択した場合でも65才をめどに二度目の定年退職を迎えるケースが多いようです。
最近は定年前に次の仕事について考え始める方が増えており、中でも起業・独立を目指す方はそれぞれ自分なりのスキルやノウハウ、経験値を活かせるような分野で第二の人生を迎えたいと在職中から起業に関しての勉強を進めているようです。
ですが、相談を重ねるに連れて、どうも首をかしげるような動機での起業志望というケースも少なくありませんでした。
1)消去法で起業を選択?
さすがに最近は減りましたが、前職で役員、または上級管理職経験者を経験された方ほど、次の仕事の選択肢を自ら狭める傾向が見受けられました。
多くは派閥争いの結果、勇退を強いられた、期待していた子会社への天下りが叶わなかったなどで、取引先への再就職や競合他社への転職などを目指したものの、それもうまくいかず、消去法で起業を目指すというものです。
在職中に公的資格をいくつか取得しており、開業は即可能というスタンスではあるものの、前述したように「絶対にこの資格で(この起業で)活きていく!」という気概はありません。
このパターンではかなりの確率で「他者依存」になりやすく、成功セミナーや講習会等に参加して、言われるままの活動に終始する等、自分の意思で経営をしない状態に陥るケースです。
「自分を見捨てた、正しい評価をしなかった会社を見返してやる!という、いわば怨念から起業を目指すというのも、あまり感心はしません。 この場合は早期に結果(成功例)を求める傾向が目立ち、長期展望に立った事業計画よりも目先の利益最優先という行動をとりがちでした。
少しでも早く昔の仲間に成功した自分を見せたいという動機からの拙速な判断や行動を起こしがちです。
今でいう承認欲求も、モチベーションの維持・高揚に善用出来れば何の問題もありませんが、単にマウントを取りたいがためだけのそれでは失敗するリスクが高まるだけです。
2)拙速な起業判断
コロナ禍の中でも意外に減らないのがこのケースでした。
「後輩が手掛けたビジネスが成功を収めている、彼が成功するなら私ならもっと成功する。」
「このトレンドは相当長く続くとどのマスコミも評論家も太鼓判だから、参入します。」
「友人からビジネスパートナーの誘いを受けている、彼なら信頼出来るから参加したい。」
などなど、熱意とやる気だけは人一倍発散させているのですが、お気付きのように自分の調査、それに基づく判断が欠如してます。
彼でも成功するなら、みんなが成功すると言っているから、成功してる人が誘ってくれたから・・・
単なる後追いでは結局先導者を超える成功は望めませんし、その成功すら確証はないのです。
その人が成功したのは、時機が適切だったから、今ほど競合が発生していなかった、表に出てこない努力、営業活動を続けてきた、その人の人脈が成功の鍵だったなど、成功するだけのちゃんとした理由があるのです。
現役時代は自分より劣っていた、自分が育てた部下だから、という立ち位置は現役時代だけのものです。
起業・独立という新たなステージでは立場が逆転していても何らおかしくはないのですが、そこに気付かない、あるいは見ないふりをすることで、勝手な成功した自分を想像してしまいます。
3年にわたるコロナ禍で今の会社や、業界の将来に 不安を覚える方は少なくありません。
そのような環境下で華々しい成功例を見聞きすれば、どうしても判断が甘く、主観的になりがちですが、そこにある落とし穴に気付きませんと、大やけどを負うことになります。
■【起業の際に考えるべき事】
ここからは、前記したような動機ではない「起業の成功が最優先の課題」という多数派の方が考えておくべき項目となります。
まず、どんな仕事で起業するかで、①個人事業主で行うのか、②法人で行うを決めます。
私のような士業の場合では最初は個人事務所を設け、個人事業主として届け出るケースが多く、最初から法人を目指すものとしては物販関係での起業の場合が多いようです。
法人というと、株式会社を想起しますが、今ではLLCと呼ばれる合同会社での設立も増えており、物販の場合は仕入先から法人との取引を求めることが多いため、最初から法人で設立を図るようです。
どういう仕事で起業を目指すかで、まずは事業形態の選択を慎重に決めていきましょう。
次は、「一国一城の主が暮らす事務所」を決めます。
言うまでもなく、集客に適した立地、便利なアクセス、競合の有無といった環境面の課題は最重要ですが、これに賃貸料や付帯設備の充実も重要な検討課題となります。
余談ですが、士業の場合は相談者とのやりとりが外部に漏れないような部屋の構造が重要な課題となります。天井部分がオープンになった共有スペースのようなオフィスや、自宅事務所で家族が一緒に出入りする玄関しかない、日本間で仕切りはふすま一枚というケースも事務所としては不適格と判断されます。
最近は貸事務所一択というケースは、都心ではまず皆無で、多くはレンタルオフィスの活用が増加しています。
レンタルオフィスと言っても専用の郵便受けや宅配ロッカー、部屋には備え付けのデスクや収納機材、コピー機を始めとしたOA機器も設置されているのがほぼ当たり前となってきました。中には共同で使えるサロンや大小のミーティングルームまで用意されているケースも少なくありません。(有料サービスの場合を含む)
法人としての契約も可能で、金融機関に専用口座を設ける際にも対応可能な物件も多数存在します。
よく言われるのが、人通りの多い路面店で事務所を構えたいという希望がありますが、物販やサービス業ならともかく、士業などの場合は事務所への出入りが人目について利用しにくいという話も聞きます。却って雑居ビル内のレンタルオフィスの方がそのビルに入る姿を知人に見られても、別の用事で利用したと「言い訳」がしやすく、気軽に足を運べるといいう話も聞きます。 この点は人それぞれですが、一応、覚えておいて損はないと思います。
最後は、どの職種でも同じですが、その分野での人脈の確保と拡大です。
特に、シニア世代からの起業となれば、なかなか積極的に未知の分野へ飛び込む機会は少なく、向こうからアプローチがあることもほぼ期待出来ません。
かといって、胡散臭いサークルや研修会に引っかかるのも避けたいという気持ちも当然でしょう。
やはり当初は、商工会や商工会議所といった公的団体にアクセスするのが無難です。ここで実施されるセミナーや経営相談等は積極的に利用した方がいいでしょう。
他にも、より専門的なつながりを得たいのであれば、ロータリークラブやライオンズクラブといった団体も専門分野でのコミュニケーションの場を得るには適していると言えます。
情報収集という意味からは、起業の先輩や同業の先輩などへ自身が利用した研修会や団体を教えてもらうなど、身近なところからの情報収集も欠かせません。あくまでも参考資料としての収集で、自分にとって有益かどうかは十分吟味することは言うまでもないことです。
人脈を増やすということは、自分が信じる価値観以外にも出会える点です。自分が興味を持つことに加えて、他人がどういうもの、どういうことに興味を持っているかを知ることが出来れば、より有益な情報発信のきっかけになりますし、自身の持つ興味や価値観は、今の時代に正しくマッチしているかを計測する指針にもなります。
最後になりますが、長年の宮仕えから、第二の人生では自由気ままな独立・開業で過ごしたいと起業を考える方は特に注意してほしいのですが、結局個人事業でも人とのつながりやコミュニケーションの重要性は全く変わりません。却って組織という隠れ蓑がない分、個人事業主はより人間関係には注意を払うべきです。 年下でも経験年数が豊富であれば、腰を低くして相談や指導を仰ぐことをいとわないようなスタイルを徹底することが起業後の円滑なスタートと安定した軌道に乗ることに繋がる道と考えます。
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