家族の仲が良くても絶対起こる!?遺産相続トラブルの対処策と予防策!
現在は景気が停滞気味とはいえ、日本では高度成長を担いその過程で財産を築いた人たちがそろそろ鬼籍に入り始める時期に差し掛かっています。それに伴って遺産相続に関するトラブルも増えてきています。
ここではよくあるトラブル事例とその解決方法、および自分の身内で遺産トラブルが発生しないためのポイントをご紹介します。
【この記事の目次】
遺産相続トラブルの現状
トラブルは10年で倍増
本当に遺産相続のトラブルが増えているのかとデータを確認すると、家庭裁判所に持ち込まれた「遺産分割審判」の数はこの10年で約2.3倍に増えています。
しかし、審判の対象となる遺産の総額は1000万円以下が全体の約32%、1000万円以上5000万円以下は約42%と全体の約74%が、5000万円以下です。5000万円も大金ですが、やはり高度成長期にサラリーマンとして働き、戸建ての自宅を建て、少し現預金の財産を残した、というような小額規模遺産の案件が多い、というのが実態です。
相続税の基礎控除額改正がトラブルに拍車
さらにこの状況に拍車をかけたのが、2015年から施行された相続税の基礎控除額改正です。改正と言っても実態は「改悪」で、控除額が減額され相続税を負担する基準が広がったのです。
具体的には、従来の基礎控除は「5000万円+1000万円×法定相続人」でしたが、これが「3000万円+600万円×法定相続人」とになりました。例で説明すると、法定相続人が1名の場合、従来は保有資産が6000万円を超える場合のみ相続税の納税が発生していましたが、これが基礎控除後に3600万円あると相続税が発生するのです。
上で挙げた、戸建て住宅を1軒持ち、現預金が2000万円~3000万円あれば、3600万円は軽く超えてしまいます。これによって、遺産相続と相続税に関するトラブルが増えてきたのです。
遺産相続でよくあるトラブル事例7選とその対処法
では遺産相続にはどのようなトラブルがあるのかを、よくある事例7つに分類してご紹介します。
1.相続人が多いケース
遺産相続で、遺産を受け取れる権利、つまり相続権を持つ人を法定相続人といいますが、通常の家庭であればこれは配偶者や実子、兄弟姉妹でしょう。しかしそこに、前妻の子供、不倫で生ませて認知した子供、養子、親の死後に現れた隠し子などが出てくると、一気に話が複雑化します。さらに、被相続人が自分を介護してくれた人にも遺産を渡す旨を遺言書に記載していたりすると、問題はさらに混迷します。
遺産相続は法定相続人が多ければ多いほどお互いの利害関係が複雑化しますから、相続人が多い場合はトラブルが起こる可能性は高まるのです。
もしも自分が法定相続人になりそうな場合、あるいは自分の遺産相続を考える場合は、相続人の範囲や遺産分割の割合を知っておき、誰にいくらの相続財産が行くのかを計算しておきましょう。
法定相続人になれる人は以下の親族です。
配偶者:必ずなる
第1順位:直系卑属のうち子供。(養子も含む)
第2順位:直系卑属のうち父と母
第3順位:兄弟姉妹
このうち、法定相続人の資格がありながら、被相続人や他の相続人の生命や遺言行為に対して、殺人未遂を犯すなど故意の侵害をした場合には「相続欠格」として相続権を喪失します。また、被相続人に対して虐待、侮辱、非行などを行っていた場合は、被相続人が家庭裁判所に請求することでその相続権を剥奪する「相続人廃除」という制度もあります。
2.相続人の1人が遺産を独占しているケース
民法上の遺産相続の基本は被相続人の自由意思に基づくことですので、遺言書などで長男1人に全遺産を相続させるということも可能です。しかし同時に民法は、その他の法定相続人にも遺留分として最低限の遺産相続分を保証しています。こう言う場合にトラブルが発生します。
自分が法定相続人でありながら、相続対象から外されていた場合は、遺留分を受け取る権利がありますが、しかしそれは自動的に認められるわけではなく、遺留分を裁判や調停によって請求することが必要になるからです。
3.兄弟間の遺産分割の割合に納得しないケース
親が死亡してその子供が複数いた、つまり法定相続人に兄弟がいた場合、あるいは死亡した人の兄弟が存命していた場合は、基本は相続額はその兄弟の中で等分になります。しかし遺言書などで、その割合を変えている場合は通常よりも少ない分しか相続できない兄弟の方から不満が上がり、トラブルになります。
このようなトラブルを解決するには法定相続人別の分配比率を事前に確かめることです。具体的な典型パターンとしては以下のようになります。
1.被相続人の配偶者とその子供が相続人の場合
配偶者:1/2
子供:1/2
2.被相続人の配偶者とその親が相続人の場合
配偶者:2/3
親:1/3
3.被相続人の配偶者とその兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4
4.被相続人に配偶者がいない場合
子供:全員で均等に分ける
親(子供がいない場合):子供がいない場合
兄弟姉妹(子供も親もいない場合):全員で均等に分ける
4.土地、不動産が遺産にあるケース
不動産や土地など「分けられない資産」が遺産として残された場合は最も遺産相続トラブルが発生しやすい状況です。なぜならそこには以下のような事情と個々の思惑が存在しがちだからです。
- 遺産を簡単に分割できない。
- 遺産の価値が客観的にとらえにくい。
- 売却して換金したい人と、そのまま居住したい人が現れる。
- 相続人のうち誰か1人でも反対すると名義を変えられない。
- 相続税対策として現金で相続する場合と、不動産として相続する場合の有利、不利が生じる。
- 土地の分割方法が合意されない。
- 居住していない相続人に権利があることが納得できない。
このようなトラブルになった場合は、分割方法の種類を確認することです。不動産の分割方法には、
- 不動産をそのまま分ける「現物分割」
- 不動産を売却して換金して分ける「換価分割」
- 不動産を相続した人が、他の相続人に相続分を金銭で払う「代償分割」
- 相続人全員で共有名義にする「共有分割」
などがあります。被相続人は、誰にどのような資産を託したいのかの意思を遺言書として残しておくことがトラブル回避になります。
5.相続財産に寄与分が存在すケース
寄与分とは、被相続人の財産の継続や増加に「特別な貢献」をした相続人がいる場合、その貢献分を金銭的に評価して法定相続分に上乗せする事を認める制度のことです。
たとえば長男がずっと母親の介護をしていた場合などがそれに当たります。その時、寄与分を認めると、それによって相続財産が減ったほかの兄弟が「そんなことは関係ない」と思うかもしれませんし、逆に寄与分がなければ長男はほかの苦労していない兄弟と等分では納得しないかもしれません。あるいは、長男の妻が介護していた場合、自分にも寄与分があるのではと思うかもしれません。こうしてトラブルが起こります。
このような場合は、寄与分が与えられる法的な根拠を確かめましょう。民法上、寄与分が認められるのは相続人のみです。息子の妻を始め、内縁の妻、事実上の養子、相続放棄者、相続欠格者、廃除者は、どんなに被相続人に対して貢献したとしても寄与分は主張できません。
また「寄与」に相当する行為についても確認しましょう。トラブルになった場合は、最終的には家庭裁判所の判断になりますが、主には以下のようなものが寄与に該当します。
- 長男として父の事業を手伝ってきた
- 被相続人の事業に資金提供をした
- 被相続人の娘が仕事を辞めて介護をした
6.内縁関係の者がいるケース
被相続人の前妻との間にも子供がいる場合など、身内以外から遺産分割を求められてトラブルになるケースもあります。前妻の子供にも遺産相続の正当な権利がありますので、裁判に発展することも多いのです。あるいは、被相続人が遺言書の中で、相続人以外への贈与を遺言していた場合もトラブルになります。
前者の場合、裁判にしたくなければ現在の子供と同じ扱いで遺産を相続させるしかありません。後者の場合も、基本は遺言に従うしかありませんが、相続額が大きくて納得できない場合などは2と同様に「遺留分減殺請求」によっていくらかは取り戻せます。
7.明らかに偏った内容の遺言書があったケース
6の極端な例で、遺言書で第三者に全遺産を渡す旨の記載があるなど、明らかに内容に偏っている場合トラブルになります。同じく、遺言書が法的な条件を満たしておらず無効の場合や、遺留分を無視した遺産分割になっている場合なども同様です。
このような場合は、その遺言書に法的な効力があるのかを確認しましょう。たとえば開封時の注意点や、法的に認められていることと認められていないことの区別、遺言書の書き方の法的な有効性などと照らし合わせることです。
遺産相続のトラブルを防ぐためにできることは?
このように遺産相続には場合によってトラブルが発生します。上ではそのケースに遭遇してしまった相続人がどのように対処すればよいのか、という点について述べましたが、ここでは被相続人、つまり遺産を残す側が、自分が死んだ後にトラブルにならないようにするための注意点を挙げておきます。
財産を漏れなく把握しておくこと
まず元気なうちに自分の財産、そして負債を漏れなく把握しておくことが重要です。またそれを誰が読んでも明確にわかるように、資産は不動産は住所も明記し、金融資産は資産の種類を商品別に記録して財産目録の形にしておきましょう。特に可能であれば、不動産は時価に近い評価額も記録しておいた方がよいでしょう。負債も同様に負債目録にしておきます。
遺留分を考慮し、バランス感覚を持って相続内容を決めること
1番よくあるトラブルは「合理的な理由なく1人の子供に全財産を与える」ことです。またそこまで極端ではなくても、遺留分以下しか相続させない場合は裁判案件になり得ます。ですから、誰にどれだけ相続させるのかは、民法の「法定相続人」や「相続順位」をベースに、承継先の家計の状況などを加味し、遺留分にも考慮しながらバランス感覚を持って決めましょう。
寄与分、特別受益も考慮すること
寄与分については説明した通り、通常の相続分にプラスされる遺産です。これに対してマイナスされる分が特別受益です。たとえば結婚の際に持参金や嫁入り道具など与えることは生前贈与になります。生活費の援助も同様です。これを特別受益と言って、遺産相続分から差し引くことが認められてます。これらを考慮して相続割合を決めておかないと、自分が貢献した話や、生前に支援を受けた話などを兄弟がお互いに言い合って収拾がつかなくなります。ただしあまり細かく書くとそれもトラブルになり得ますので、大まかな根拠と金額で考慮するようにしましょう。
付言事項を活用すること
付言事項とは、遺言の動機、遺産分割方法の理由などを、遺言書の最後に付記することです。法的な効力ありませんが、被相続人の意思を明確にすることで、家族間のもめ事を回避する一定の効果があります。
自分が生きているうちに、相続内容を話し合わせること
自分がなくなった後のことを生きている間に話題にされるのは、する方もされる方も嫌かもしれませんが、トラブルを防ぐためには、子供同士が集まった場所で、より公平な分割について遠慮なく話し合っておくことが重要です。その際も漫然とではなく、「特別受益」と「寄与分」について話合わせ、合意させておきましょう。
しかし、親族だけでの遺産協議はのちのちのトラブルに繋がりかねません。例えば、日本法規情報の無料相談窓口では日本全国の遺産相続問題に強い専門家を紹介してくれます。このように、遺産相続に関する問題は法律のプロにお任せするのも一つの手です。
まとめ
いかがでしたか。
「お金のある家は大変だね、うちは財産がないから大丈夫」などと言っている人に限って、意外に集めてみると相続財産があり、かつ遺言書がないか、あっても十分な配慮がないものなので、トラブルを起こしがちなのが現状です。
上で挙げたような、遺産相続のトラブルになるケースを参考に、自分が相続人になる場合、自分が被相続人になる場合、それぞれについて元気なうちにしっかりと考え、形として残しすようにしましょう。
記事提供元
サイト名 | HOW MATCH |
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