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釣った魚で“食中毒”を引き起こす原因と誰でもできる対策

じつは、加熱調理だけでは防げない魚の食虫毒もあります

加熱調理は“万能な食中毒対策”とは言えません

魚の食中毒予防に加熱処理が万能ではない

食中毒といえば、加熱不十分な食材を食べた時に起こるイメージがあるかもしれません。

しかしながら、原因によっては加熱調理でも防げない食中毒があります。

たとえば高温の油でしっかり揚げても駄目なんです

食中毒は原因に合わせた対策が必要

マグロの刺身

多くの食中毒は、適切な対策で防ぐことができます。

今回の記事では、おもな魚の“食中毒の種類”“原因に応じた対策”についてご紹介いたします。

釣った魚を食べて食中毒になる、おもな原因について

ケース①:毒魚を誤って食べてしまう

魚の食中毒、毒魚を食す

最もイメージしやすい魚の食中毒といえば、フグなどの毒を持った魚を食べることによって生じる食中毒でしょう。

フグ毒の他にも、南方系の魚が持つシガテラ毒やアオブダイやソウシハギが内臓に蓄えるパリトキシン、バラムツやアブラソコムツのワックスエステルなどがおもな魚の有毒成分として知られています。

■フグ毒(初期症状)

  1. 食後20分から3時間までに、口唇、舌端、指先のしびれ、頭痛、腹痛、激しい嘔吐、歩行困難。
  2. 最終的に意識を失い死に至る。

 

■シガテラ毒

  1. 神経系の症状が特徴。
  2. 温度感覚異常、倦怠感、激しい痛み、かゆみ、しびれ、下痢、おう吐、腹痛、不整脈、血圧低下など。
  3. 神経系の症状は1週間~数ヶ月、一年以上続く場合もある。

 

■パリトキシン

  1. 食後約12~24時間で発症。
  2. 激しい筋肉痛、腰や四肢のしびれ、呼吸困難、歩行困難、胸部圧迫、麻痺、けいれんなど。
  3. 重篤な場合、半日から数日で死に至る。

 

■ワックスエステル

  1. 大量に摂取すると、18~56時間で腹痛や下痢などの症状が特徴。

ケース②:寄生虫に汚染された魚を食べてしまう

クドアに汚染された魚

毒を持たない魚であっても、人体に有害な寄生虫に汚染された魚を摂取することで食中毒を起こす場合があります

もっとも有名なのは”アニサキス”でしょう。他にも、クドアや顎口虫、横川球虫などが有害な寄生虫として知られています。

■アニサキス

  1. 悪心、みぞおちの激しい痛み、強い下腹部痛、吐き気、嘔吐、発熱など。

 

■クドア

  1. 下痢、嘔吐、胃の不快感など。軽傷で済む場合が多い。

 

■顎口虫

  1. 皮膚爬行症。稀に眼球、脳、肺、肝臓、生殖器等に迷入することで失明、意識障害などを発症し死亡する場合がある。

 

■横川球虫

  1. 軟便、腹痛、腹部膨満感、下痢など。軽傷の場合が多い反面、発見が遅れると数年間体内に寄生する場合もある。

ケース③:ヒスタミンによる食中毒

魚ヒスタミン中毒

毒や寄生虫以外にも細菌の活動による食中毒もあり、原因物質によっては加熱調理しても防げない場合があります

サバなど青魚を食べた際に起きるヒスタミン中毒もそのひとつで、青魚の体内に多く含まれるヒスチジン(必須アミノ酸)からヒスタミン生成菌によってヒスタミン(食中毒原因物質)が生成されます。

ヒスタミンは熱に対して安定であるため、一度生成されてしまうと凍らしても、焼いたり揚げたりしても食虫毒を防ぐことはできません。

言い換えれば、ヒスタミンが増えてしまった魚はどんな調理法でも食べられません

■おもな症状

  1. 1時間以内に顔面、特に口の周りや耳たぶの紅潮、頭痛、じんましん、発熱など。重症になることは少ない。

▼魚が原因のヒスタミン食中毒について

  • ヒスタミン中毒

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ケース④:腸炎ビブリオによる食中毒

釣った魚の常温放置による腸炎ビブリオによる食中毒

腸炎ビブリオは海水中にごく当たり前に存在する細菌で、魚の体表についた腸炎ビブリオの増殖は15℃以上で活発になり、25~37℃で極めて早く増殖し、あっという間に食中毒を起こす菌量になります。

腸炎ビブリオ自体は熱によって死滅しますが、腸炎ビブリオによって生成された毒素は熱で失った毒性が復活する場合があるため加熱調理をしても食中毒を防ぐことはできません

また腸炎ビブリオは、海水に棲む細菌であるため魚だけでなくイカやカニ、貝類など海産の魚介類すべてにリスクがあります。

■おもな症状

  1. 潜伏時間は8時間〜24時間(短い場合で2、3時間)。激しい腹痛、下痢などを主症状とし、発熱、はき気、嘔吐を起こす場合もある。

▼魚介類に潜む腸炎ビブリオについて

  • 腸炎ビブリオによる腹痛

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毒魚に対する対策

知らない魚を無暗に食べない

毒を有している可能性のあるハコフグ

毒魚に対する対策として一番大切なのは、知らない魚を無暗に食べないこと。

堤防釣りで釣れる身近な魚にも、フグの仲間を中心に猛毒を持つ魚がいます。

極稀に、『○○フグは毒が無いから食べられる』といってフグを持ち帰るベテラン釣り師もいますが、絶対に真似をしないようにしましょう。

▼身近な毒魚についてはコチラの記事でご紹介。

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内蔵はとくに注意が必要!よく似た魚にも気を付けよう

似ている魚でも有毒と無毒の魚がいる

アオブダイやソウシハギといった魚は、内臓に猛毒を蓄えている場合があります。(※アオブダイは筋肉にもパリトキシンを持つ場合があります)。

また、ブダイはOKだがアオブダイはNG。ウスバハギはOKだがソウシハギはNG。といった具合に似た魚種であっても毒の有無が異なる場合があるので注意が必要です。

釣れた魚を食べる場合は、しっかり魚種を判別して毒の有無を確認し、分からないものは食べないように心掛けましょう。

地域によって毒の有無に差がある場合がある

同じ種類の魚であっても、地域によって毒の有無が異なる場合があります

自分が住んでいる街で当たり前に食べていた魚が、違う地域ではシガテラ毒を持つ魚だった……。

なんてことにならないように、遠征や旅行先ではその土地の情報を事前に入手して食中毒に十分気を付けましょう。

寄生虫対策は十分な加熱調理が有効

寄生虫に汚染された魚かどうか目視で確認する

魚の食中毒、アニサキス

アニサキスやクドアなど、目視で確認できる大きさの寄生虫は、食べようとしている魚が汚染されていないか、内臓を抜く際や3枚におろす際に十分確認するようにしましょう

アニサキスは透明感のあるミミズのような形をしており見慣れてくると、よく目につくようになります。

筋肉内に白い粒粒が見られる場合はクドアに汚染されている可能性があり、生食は不可です。

寄生虫を殺すことを意識した調理をする

魚の寄生虫、加熱によって死んだもの

寄生虫は熱によって殺すことができるので、寄生虫に合わせた加熱や冷凍処理を行うことで安心して食せます。

アニサキスは、中心温度-20℃以下で24時間以上の冷凍もしくは中心温度60℃以上で1分間以上の加熱で死滅します。

クドアは、中心温度-20℃で4時間以上の冷凍もしくは、中心温度75℃以上で5分以上の加熱で病原性が失われます。

淡水魚の生食は避けるべし

淡水魚の生食は避けるべし

人体に有害な寄生虫は海産魚よりも淡水魚の方が重症化するリスクが高く、冷凍されたものでも淡水魚の生食は避けた方が良いとされます。

淡水魚由来の寄生虫症の感染源として、ドジョウの踊り食い、ライギョやブラックバスなどの生食が知られています。

ヒスタミン中毒の対策

ヒスタミン生成菌が多い“エラ”や“内臓”を釣ったらすぐに取り去る

ヒスタミン中毒の対策

提供:Tsuki

ヒスタミン生成菌はサバなどの青魚のエラや消化管に多いため、釣れたその場でエラと内臓を取り去ることが効果的です。

ヒスタミン生成菌の働きを鈍くするために冷やして早く食べる

ヒスタミン中毒の対策

提供:Tsuki

ヒスタミン生成菌の活動を抑えるために、釣った青魚はすぐにクーラーボックスで冷やし、なるべく早く食べましょう。

一般的にヒスタミン生成菌は低い温度で活性が下がりますので、冷蔵もしくは冷凍保存が有効です。

しかしながら、中には10℃以下でもヒスタミンを生成する菌も知られていますので、冷蔵であっても青魚の長期保存には注意が必要です。

また、解凍後に常温で放置すると一気にヒスタミンが生成される場合がありますので、解凍後は素早く食べるようにしましょう。

ヒスタミンが生成された魚は外観やニオイでは分からない

マグロの刺身

腐った食材は腐敗臭を発したり変色したりしますが、ヒスタミンが生成された魚は外観やニオイでは判別できませんので注意が必要です。

極端にヒスタミンが増えてしまった場合は、口にした瞬間に唇や舌にピりピりとした刺激を感じる場合がありますので、この際はそれ以上食べないようにしましょう。

腸炎ビブリオは低温で繁殖しにくく、真水に弱い

腸炎ビブリオは10℃以下で増殖速度が低下する

腸炎ビブリオ対策

一般的に腸炎ビブリオは10℃以下で増殖速度が低下する一方で、25℃から37℃で極めて早く増殖します。

釣った魚を海水を入れたバケツなどに死んだ状態で放置せずに、すぐにクーラーボックスへうつす癖をつけましょう。

腸炎ビブリオは真水で洗い流しましょう

腸炎ビブリオ対策

真水に弱い腸炎ビブリオは飲み水として使用できる水(水道水など)を使用して、大部分を洗い流したり死滅させることができます。

持ち帰った魚をまな板などに置く前に、水道水でしっかり洗うことで腸炎ビブリオのリスクを減らすことができます

三枚におろすまでは、水道水を使って魚を洗う癖をつけると良いでしょう。

また、刺身用の冊は食味が落ちてしまうため水洗いはしませんが、心配な場合は氷水などで洗いにしても良いでしょう。

まな板や包丁に付着した腸炎ビブリオにもご注意ください

まな板や包丁に付着した腸炎ビブリオにも注意

魚を水道水で洗う前にまな板の上でウロコを取ったり、内臓を取ってしまうと腸炎ビブリオがまな板や包丁、そして自分の手にもベットリとついてしまいます。

腸炎ビブリオは条件が揃えば魚の体表でなくても増殖しますので、魚を捌いた調理器具も適時水道水で洗い流すようにしましょう

魚屋などでは、常に水道水をかけ流しにしながら魚をおろします。

食中毒対策をしっかりして、安心できる魚料理を楽しもう

刺身

魚料理に限らず、食中毒予防の三原則は『つけない、増やさない、やっつける』とよく言われます。

食中毒の原因によって対策は様々ですが、低温での鮮度保持(増やさない)が基本。

可能ならば釣れたその場でエラと内臓を取り、クーラーボックスでしっかり冷やすこと。

自宅に帰ったら、調理器具を使う前に一度水道水で魚を洗い、使用した調理器具はこまめに水道水で洗う癖をつけましょう。

魚に限らず、食べ物に絶対の安全はありませんが、知識と対策を持って調理すれば食中毒のリスクをグンっと下げた安心できる魚料理を楽しむことができるはずですよ。

撮影・文:山根 央之

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